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愛するが故 |
2002/12/05 23:57 |
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僕は非常に怒っている。「おこっている」ではない、「いかっている」だ。意味は同じだが響きが違う。響きが違うと聞き手に与える印象が違う。僕は今、怒っている!
「何だあの牛丼は!松屋!」
自分の連載コラム(これのことね)のタイトルにわざわざ「牛丼」という言葉を付けるほど牛丼好きの僕だ。N.Y.の吉野家通算千号店、海外第一号店にも、有給を取って開店日に並んだ男だ。牛丼に対する愛情は海よりも深く天よりも高い。牛丼の匂いをおかずにご飯三杯はイケる。牛丼の海に溺れたい。覚えたてのスキューバダイビングで対抗するのだ。通常の呼吸法で酸素は確保出来るのだろうか?カルビーが牛丼味のポテトチップスを発売するのを心待ちにしている。何の話だ?牛丼の話だ。
今日大阪心斎橋のクラブクアトロでDMBQというバンドのライブを見た後で、そのビルのすぐ横にある松屋に入って牛丼の大盛を注文した。そして出て来た牛丼を見て僕は非常にイヤな気分になった。乗っている肉が殆ど脂身ばかりなのである。僕は牛でも豚でも鳥でも何でも、肉の脂身が大嫌いなのだ。なら何故牛丼が好きなのかと問われると、正直そこのところが自分でもよく分からない。何か「ギリギリ食える」という感じだ。ギリギリ食えるようなものを「好き」とか言うなよなんて細かい突っ込みはこの際(どの際だ)ナシにしよう。とにかく僕は肉の脂身が嫌いだが牛丼の肉は何故か食え、そして牛丼が好きだ。…で、ややこしい話だが、牛丼の肉の脂身許容量にも限度というものがあり、そして今日の松屋の肉の脂身はそれを遥かに上回っていたのである。だって殆ど全部脂身なんですもの!引き締まったところがないんですもの!どこを取ってもぶよぶよですもの!とにもかくにも酷く憂鬱な牛丼が僕の前に出て来たのである。
味噌汁をすすって気を鎮め、一口食ってみた。
「…マズイ!」
これはマズイ!画期的にマズイ!肉には殆どツユがしみ込んでおらず、これはもうただ白いご飯に脂身だらけの腑抜けた牛肉が乗っかっているだけという想像するだにオゾマシイ料理である。実は松屋でこういう牛丼を出されたのは今日で二回目だ。前回は京都河原町の蛸薬師店でやられた。その時はテーブルに並んでいる定食用のタレをどんぶりにぶちまけ、舌を騙し騙し完食したのだが、もう今回は我慢出来なかった。二口つついただけで全く減っていない牛丼を後に残し、僕は店を出てしまったのだ!「納得いかない料理には金は払わねーぜ」みたいで格好イイと思いきや、松屋は前払い制なので、バッチリ390円払ってしまっている。なるほど数多ある牛丼屋の中で松屋だけが前払い制度を採用しているのはこのような理由からか。僕の牛丼屋渡り歩き経験から考えて、マズイ牛丼が出て来る確率は他の牛丼屋に比べて松屋が明らかに高い。それはもう間違いない。それでも僕がたまに松屋に入ってしまうのは、味噌汁が付いてくることと、「今日は不味くないかも」という淡い期待感からだ。その期待を今日は徹底的に裏切られた。牛丼屋に入って牛丼を残して帰ったのは今日が初めてだ。
この屈辱は忘れないぞ松屋。
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