ジュズツナギ

第 31 回

「 出会い 」

山植つよし
( コミュニケーション・コーディネーター)

僕が京都の音楽と言うものに出会ったのは、3年間東京で過ごした後、再び京都に 帰ってきてからだった。

東京には当時、ホコ天と言うものがあって、たくさんのバンドが路上ライブをしてい た。それが僕にとってライブと言うものとの初めての出会い。

それから、いくつかのバンドのライブを見るうちに「ライブ」というCDやテレビで感 じるのとは違う「生の音楽」と言うものにのめりこんだ。

東京から京都に戻ってきて、早速ライブハウスを探した。
「ライブに行きたい」という気持ちはあったが、京都の音楽事情なんて全くわからな い。

初めて京都で出会ったライブハウスは、当時今出川河原町にあった「OTHER SIDE」 だった。ライブのスケジュールを見ると「アコースティック飛び入りライブ」と言う ものを見つけた。ドリンク代のみで、たくさんの人の歌が聞けるので、「京都の音楽 に触れるキッカケ」としては格好の場所だと思い、早速足を運んだ。

「OTHER SIDE」のなにやら怪しげな雰囲気のする扉を開けると、そこには東京で見た ものとは全く違う独特の雰囲気と音楽のライブがあった。バンドとは違い派手さはな く、ステージにはたった一人、楽器もアコギのみで音もシンプル。それだけに聞いて いる人に訴えかけてくる力はとてつもなく大きかった。すごい衝撃的だった。こんな 世界が京都にあったのか・・。京都に生まれてから20数年間で初めて出会った「ア コースティックの音楽」だった。

それから何度か「OTHER SIDE」に足を運ぶようになり、「アコースティックの音」の 心地よさと、「唄うたい」達の素敵な歌にのめりこんでいった。

「OTHER SIDE」でのライブは、唄うたいとお客さんの距離がとても近かった。ライブ 中は、お客さん一人一人が静かに唄にのめりこんでいき、ライブが終わったあとは、 気軽に唄うたいたちとお酒を飲んで夜を明かす。

この頃から、夜が惜しいと感じるようになった。ライブ後に音楽や歌の話をしている 「唄うたい」達の目は、いつも輝いていて、話す言葉の一つ一つは、生き生きとして いて強い力を持っていた。その話をいつまでも聞いていたいと思うようになり、いつ も気が付くと朝になっていた。多分、朝と言うものが無ければ延々と話を聞き続けて いただろう。それくらい、僕にとって貴重で楽しい時間だった。

ライブに出会うことで「唄うたい」達に出会い、顔なじみのお客さんも増えて、出会 いが出会いを生み、大きな輪になった。それは音楽が生み出した出会いの力だと思 う。京都で音楽に出会わなかったら出会えなかったであろうたくさんの人たちに、 「OTHER SIDE」という一つのお店で出会うことができた。「OTHER SIDE」に感謝。

「OTHER SIDE」の唄うたい達は、仕事と音楽を両立している人も多かった。そういう 人たちを見ていて、「音楽をする=プロになる」と言うものが音楽をやっていく人の スタンスである。と今まで僕が持っていた固定観念は、「音楽をする=生き方」であ り「音楽は生活の一部」と言うものに変わった。音楽とは、僕が思っていたよりも もっと身近なものような気がした。

ふと気が付くといつも音楽が生活の中心になっていた。普段使うカレンダーはライブ のスケジュール。ライブの都合優先で普段の予定を立てていた。月に10日くらいは 「OTHER SIDE」でライブを聞いているのが当たり前で、ライブに行くことで体も精神 も潤っていった。「唄うたい」達と話すことで、音楽の楽しみ方を教えてもらった り、歌うって素敵なこと、気持ちいいものと言うのが分かった。

「OTHER SIDE」で、たくさんのライブを見るうちに、自分でも「楽器をやってみた い」「歌が歌ってみたい」と思うようになり、自分で曲を作って「飛び入りライブ」 のステージに立つようになった。

一人でステージに立つと、本当に自分が丸裸にされたような気持ちになる。例え様の 無い孤独感。みんなの視線が自分に集中する。自分の出す音や声のひとつひとつが、 客席にまっすぐ飛んで行く。ものすごい緊張感。その中で、自分が開放できると自分 自身が無くなり、空間と一体化したような気持ち良さが感じられる。普段の生活では 味わえないものすごい空間だ。そしてまた歌が終わったあとの温かい拍手がたまらな い。普段生活していて拍手をしてもらう機会なんてあるだろうか。とにかく、ステー ジで歌うという事は、とても心地よい非日常的空間を味わえる。

こんなに素敵な空間を独り占めするのは、とても惜しい。多くの人に音楽でたくさん の人やお店や唄に出会って欲しいと思った。

そこで、「コミュニケーションコーディネーター」という言葉をつくり、ライブハウ スや唄うたいの紹介HPなどを作成して、京都の音楽の輪をさらに広げていくことに少 しでも貢献できるような活動をするようになった。

これからも京都に素敵な「音楽の輪」が広がっていきますように・・・。


ジュズツナギ
つぎの方は…
中村 ゆきまさ
シンガー
山植 つよし
コミュニケーション・
コーディネーター
沼 幸広
JEY'S BAR

第32回は、「JEY'S BAR」をされているマスターの「沼幸広」さんです。
僕がいつも一人で飲みに行くとやさしく声をかけてくれて、音楽の話や京都の話やラ イブの話など、たくさんの楽しい話を聞かせてくれるので、お気に入りのマスターで す。


山植つよし
本業は、CGデザイナーです。(かっこよく言うと・・。)
自称、コミュニケーション・コーディネーター。
主な活動は、個人のHP「うえくんのホームページ」や、京都のちょっとした情報サイト「京都ぽんねっと」や、なんでも小箱「わからん屋」のHPなどを運営しています。
音楽好きでネコ好きです。

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