「ちょっと京都に歌いに行って来るよ」そう言って家を出て18年が過ぎた。なぜ京都だったのか…もう忘れてしまった。かつての”ブルースブーム”など何の関係もなかったし、”関西フォーク”に憧れていたわけでもない。”ただ家を出たかっただけ”だったのかも知れない…。 思えば京都には少なからず縁があった。 その「今さら」な街へとやって来た。 何と言っても僕を夢中にさせたのは、先にも挙げたムーブメントが生み出し、そしてまたムーブメントを生み出したとも言える「歌える場所」が数多くあった事だ。 その頃あったそれらの場所の中にはLiveスペースという顔と同時に、いや、それ以上に酒場としての側面を持つものが多かったように思う。そこではバンドであるか、ソロシンガーであるかといったジャンルも、時には観客と演奏者という垣根さえ越え、もちろん馴れ合いなどではなく、音楽の話や、概ねそうだったかも知れないが、とるに足らない下らない話で盛り上がり、その出会いやエネルギーが、その場所を活気づけ、また次の流れへと続いていった。 酒場として機能を持たないスペースでも、あらゆる表現を発信する場としての生々しいエネルギーを湛えていたし、いかにも「何か起りそうなムード」をかもし出していたものだった。 地方から居場所を求めてやって来た青年が、そのような場所、場面に身を置いて衝撃を受けない筈はない。 しかし、いつの間にか時間も人も流れ、数々の場所が生まれては消えていった。 その中で「僕に何が出来るのか」と考えてみたりもするが、なかなか答えは出ないし、思った様にゆかないのもまた現実だ。だが、なんとかそんな場所を残してゆきたいと思っているし、残っていって欲しいと願っている。 たくさんの"何か"、店、人、音楽、ムーブメント、ファッション、etc… 「ちょっと」というには長くなってしまったけれど、あの時「歌いに行って来るよ」と言って家を出てきた時のまま…。 |
北園 竜彦 Toy Box |
中村 ゆきまさ シンガー |
山植つよし コミュニケーション・ コーディネーター |
第31回は、自称、コミュニケーション・コーディネーターにして、京都打ち水大作戦の提唱者という謎の肩書きを持つ男、山植つよし。つよにゃー。 |
中村ゆきまさ |
関西圏を中心に活動を続けるアコースティック・ギター、シンガー。 http://www.lily.sannet.ne.jp/nyard/yukimasa/ |
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