ジュズツナギ

第 65 回

「 Full Metal Jackoff 」

タクヤ
(バッチグーバイシクル)

自転車屋なので自転車の音楽といっても好きな曲がないし…京都も長いけど京都の音楽事情も知らないし…というわけで何回聞いても飽きないJello Biafraの話をしようと思います。

僕は非常に真面目な人間だったので子供のころはクラッシックとかポップスばかりでティーンエイジャーになってぐれた時でもレゲーとかニューエージでした。 実家が寺なのでそういうもんだったのです。ピストルズとかも聞いてたけど乱暴な汚い音楽やなぁ、という感想で唯一パンクな気持ちにしてくれるのがボブ・ディランのアルバム「Desire」の「ハリケーン」て曲くらい。 そのくらい真面目な人間だったのです。

まぁそんな人間でも年齢を重ねるに連れてイライラすることも多くて、フォークランド戦争のニュースを見ながら「人類なんか絶滅してしまえ」とか「日本も早く戦争にならないかなぁ」とか思ってたのですがそんな事がおきるはずも無く、しょうがないのでパンクでいっとくかと。 とりあえずモヒカンにしてみたけど癖毛なのでどうにもならずスキンヘッドにしたら「ボンも得度(とくど=出家)しはったんでっか?」とか近所の方に言われて、「ファックユー、ババァ!ゴーツーヘル!ゴーツー西方浄土!」と心の中で思いました。

それからはお経の代わりに「人類絶滅、人類絶滅」と唱える日々だったのですが、実はパンクロックには違和感があって、奈良の田舎ではロクなレコード屋もなく、しょうがないので「ハリケーン」ばっかり聞いてました。 あとピンクフロイドの「The Wall」。あれは英語がわからないままアルバム全部脳内で再生できるほど聞いた。

そしてある日出会ってしまったのです。忘れもしない「Give Me Convenience or Give Me Death」のカセットテープ。 ウォークマンに入れて1曲目の「PoliceTruck」が気分にピッタリで、おーコレコレ、2曲目の「Too Drunk To Fuck」がまた良くて地獄特急直行便!(何年か後に聞くカバーアルバムでもこの曲順でグッときた) 3曲目が「California Uber Alles」でA面の最後が「Holiday in Cambodia」。この曲は皆さんも知ってますよね?当時は「カンボジア人を皆殺しにしろ!」という曲だと長いこと信じてました。

次に手に入れたのが「Plastic Surgery Disasters」。「整形手術大失敗」。なんて素晴らしいタイトルだと思って、特に11曲目の「Bleed for Me」から12曲目の「I Am the Owl」が最高で、ウォークマンの頭だし機能では12曲目の頭が引っかからないのでずーっと同じ曲が転調してるのだと思い込んでたのですが、このつなぎは今でも素晴らしいと思います。

何回も聴くうちに「I Am the Owl」の歌詞がウォーターゲートがナンタラとか言ってるし、なんとなく「殺す」とか「死ね」ということじゃないような気がしてきて、歌詞カードを読んだが英語が難しくて意味がわからない。 そもそもいつも持ち歩いてたので雨や汗で歌詞カードがボロボロで読めないところも多い。ほとんど暗号解読でしたが幸いテープが伸びてたおかげで所々聞き取れる。英和辞書を持ち歩くようになりました。

「俺は水道修理屋。でもお前の家から帰らなかった」?
「お前の会話を録音するのは退屈な仕事だ」?
「気に入らないデモに鬘をかぶって紛れ込み、暴動へと導く。リーダーは逮捕される」?
「LSDを飲ませて高速道路の真中でおろす。若い活動家がなぜ車に轢かれたかマスコミは気にしない」!
「俺はフクロウ。美しい国のためにお前達を掃除する」!

そういうことだったのか!いきなり目の前が開けた気がして他の曲も訳しまくりました。 パンクが「Kill’em All 」(すべて破壊せよ)「Kill somebody Kill yourself」(誰かを殺して自分も死ね)だとすれば、ハードコアは「Search and Destroy」(何が問題なのか原因を探し、破壊せよ)だということを知りました。

そういう怒りのあり方もアリなのかと。 単なる破壊にはどこまで行っても正義などない。しかし怒りを心に持ちながらも正しく生きることは可能なのだと。

いやいや、ただの怒れる若者だった僕がこういう世界観に出会ったのも「ご仏縁」、仏様のお導きであることよなぁ。と今となっては思うのです。ベトナム戦争の‘NAMとは南無阿弥陀仏の南無であったのかと。

そして語学力も伸びた数年後に出会ったこの曲。Jello Biafra with DOA の「Full Metal Jackoff」。個人的にハードコアの最高峰だと思います。

「これ聞けよ!」と20代の怒れる若者に聴かせてみたところ、 「タクヤさん、これハードコアじゃないっすよ!コアって言うたらこんな感じの曲のことですよ!」 と聞かせてくれたのがキテレツ大百科のテーマソングをハードコア風な味付けにして巻き舌英語風の発音で唄ってるどうでもいいポップス。 …アホか、こんなゴミみたいな音楽がハードコアと呼ばれるならハードコアなんか死んだほうがマシじゃ。バカ。

というわけで脱線しましたがJ.B.の傑作「Full Metal Jackoff」です。 日本語訳もあるようですが納得いかないのでタクヤ訳で。

Full Metal Jackoff ※1

around our nation's capital there's a freeway 8 lanes wide
我が国の首都は8車線のフリーウェイで囲まれている。
white concrete ringed around the city for those who want inside
環状線は白い壁としてその中にいる奴等を守っている。
get on get off ignore everything to the sides
高速にのったり降りたりしてればいい。他のことは気にするな。
in your midst I drive while homeboys in the back of the van make drugs
お前が一休みする間は俺が運転する。その間にも仲間はバンの後ろでドラッグを精製している。

wanna hide something like a crack lab just put it in plain sight
クラック工場を隠しておきたければ見慣れた風景に溶け込ませることだ。
only stop to refuel and unload more poison to tear more lives apart
停まるのは、ガソリンを入れる時と命を奪う毒を荷降ろしする時だけ。
Now the neighborhoods have gone psycho gang wars like never before
最近おまえの近所に住んでるのはキチガイばかり。ギャングの抗争は今までに無く激しい。
better lock your doors, buy some guns and prey for martial law
ドアに鍵をかけろ。銃を買え。そして戒厳令を請うのだ。

on the Washington d.c. beltway around and around I go in the black van with no windows and a chimney puffing smoke
ワシントンD.C.の環状線を窓の無い黒いバンが走る。煙突から煙を出しながら。
bloody headlines in the news each day drug crisis everywhere so much comes in so easy it's as though someone wants it there
新聞の見出しは毎日血みどろだ。ドラッグ問題がはびこってるぞ。どうしてこんなにドラッグがあふれているんだ。まるで誰かが仕組んでいるようだ。

it would be a little obvious to fence off all the slums hand out machine guns to the poor in the projects and watch 'em kill each other off
例えばスラムをフェンスで隔絶しマシンガンを支給し、公団に住む貧乏人どもを殺しあわせる。そんなやり方では露骨すぎるだろう。
a more subtle genocide is when the only hope for the young is to join the army or slowly die
より巧妙な虐殺のためには、スラムで死んだような人生を送りたくない若者に、軍に入隊するのを望ませることだ。
wall street or crack dealer avenue the last roads left to the American dream wall street or crack dealer avenue wall street or crack dealer avenue
ウォールストリートか、クラックを売りさばく裏道。アメリカンドリームへ続く道はこの2つだけ。ウォールストリートか、クラックを売りさばく裏道。
only on road leads to this neighborhood little kids wanna sell drugs when they grow up
もちろんスラムの子供には1つの道しか残されていない。子供達はドラッグディーラーになることを夢みている。

the folks might get just a little upset if they knew where that dope comes from.
皆さんのような方々でも、そのドラッグがどこから来ているか知れば少しは腹が立つかも知れない。
from Columbia to the contras to our air force bases, where we trade them for guns
コロンビアからコントラ※2に、そして我が国の空軍基地に運び込まれ、銃と物々交換される。※3
the moral equivalent of a serial killer and his CIA friends call the shots from the white house
殺人鬼なみのモラル。ホワイトハウスにいる奴※4のCIA仲間が電話でヤクの注文をしている。
but now that we own the media too those stories just don't run
メディアは既にコントロールされ、この話は誰も知ることが無い。

on the Washington d.c. beltway, 'round and 'round I go in a black van with no windows, and a chimney puffing smoke
ワシントンD.C.の環状線を窓の無い黒いバンが走る。その煙突からは煙が出ている。

some gang that ran smack in Viet nam ain't got no reason to fear
ベトナムでヘロイン流通をやった経験※5がある奴等にとって、こんな程度で心配は無い。
just get a vice president so dumb the crook at the top never gets impeached
マヌケな副大統領※6を選んでおけば、実権を握るペテン師どもが弾劾されることもない。

that sure was easy wasn't it? that sure was easy wasn't it? more crack, more panic, more cops, more jails you see emergency-total war you see emergency total war
どうだ、簡単作戦だ。クラックを増やせば、恐怖が増える。そうすれば警官を増やせるし、刑務所も増やせる。人々が非常事態だと感じれば全面戦争の用意は完了だ。
you see a black face, you see a crack head you see a black face, you see a crack head you see a black face, you see Willie Horton with a knife you see Willie Horton with a knife
黒人を見ればクラック中毒だと思うようになる。黒人はすべてクラック中毒だと。黒人を見ればお前はウィリー・ホートン※7を思いうかべるようになる。ナイフを持ったウィリー・ホートンを。
you see one Willie Horton you've seen them all they're everywhere, I know
黒人は誰でもウィリー・ホートンで、あらゆるところ存在すると。
you asked for it, you've got it drug suspects have no rights at all property seized and sold before trial labor camps on American soil
そしてお前が望んだ社会がこれだ。ドラッグに関わる容疑者は全ての権利を奪われた。裁判を受ける前に資産は没収され公売にかけられる。このアメリカに強制収容所を作ってしまったのだ!
Neo-nazi bootboys that the cops never seem to arrest prowl neighborhoods with baseball bats why now? why do they get so much press?
このタイミングになぜかメディアはネオナチの若者をもてはやす。やつらはバットを片手に近所をうろつくが、警察は気にもかけない。
mein kampf-the mini series Oliver North a patriotic hero the leader for tomorrow is yours today finally gotcha psyched for a police state
「我が闘争」のミニチュア版、オリバー・ノース※8が愛国者だってか?「今ご注文いただければ未来のリーダーがすぐお手元に。」だと? 精神構造はすでに警察国家だな。

on the Washington d.c. beltway around and around I go in a black van with no windows and a chimney puffing smoke
ワシントンD.C.の環状線を窓の無い黒いバンが走る。煙突から煙を出しながら。
my van's a mobile oven now that burns the bodies you never see just like in Chile or Guatemala people just seem to disappear
黒いバンは今や火葬場も兼ねている。まるでチリかグアテマラのように人が蒸発し、その死体は誰の目にもふれない。

just like Rome we fell asleep when we got spoiled
まるでローマ市民が怠慢のなかに惰眠をむさぼったように、
ignore human rights in the rest of the world ya might just lose your own
他人の人権など気にかけないうちに、自分の権利も失ってしまう。
as the noose of narco-militarism tightens around our necks
麻薬軍国主義の絞首刑の縄が首にまかれているのも気が付かずに、
we worry over burning flags and pee in jars at work to keep our jobs
国旗が燃やされるのを心配し、仕事を失わないために職場で尿検査をする。
but if someone came for you one night and dragged you away do you really think your neighbors would even care
しかし、ある夜、警官がお前の家を訪れ拉致していったとき、気付いてくれる近所の人がまだ残っていると思うか?

‐ コーラス
Embrace the red, white and blue Reich.
Embrace the red, white and blue Reich.
赤と白、青の帝国に敬礼せよ。星条旗の帝国に敬意を払え
Ollie for president. He’ll get things done.
Ollie for president. He’ll get things done.
実行力のあるオリバー・ノースこそ大統領に!
実行力のあるオリバー・ノースを大統領に!


ジュズツナギ
つぎの方は…
森ハルコ
moshimoshi
タクヤ
バッチグーバイシクル
オーヤミノル
オオヤコーヒ焙煎所

ジュズツナギ第66回は、オーヤコーヒのオーヤさんにお願いします。コーヒーの焙煎で有名なオーヤさんですが実は寿司を握るのもプロ並み。そしてバンド活動も。昔やってたパチャママという喫茶店にお世話になったミュージシャンも多いのでは。


タクヤ
1968年生れ。自転車屋/メッセンジャー。世界を股に美術関係、カメラマン、音楽関係、映画関係の仕事を転々とするが身につかず、ここ15年は日本で自転車関係の仕事を転々とする。好きな食べ物はアボカド。 得意料理はアジフライ。好きな音楽は…
わかりませんので、持ち歩き用のCDケースに今日入ってるのを見てみると・・・
UB40 SIGNING OFF/Joan Parish & Polly Jean Harvey “danse hall at louse point”/YO-YO MA &ASTOR PIAZZOLLA “SOUL OF THE TANGO”/Joao Girbert “in Tokyo”/V.A.“VIRUS 100”/V.A.“NATURAL BORN KILLERS”/Dead Kennedys “Fresh Fruit for Rotting Vegetables”/Stone Roses “Made of stone”/MOLOTOV “?Donde Jugaran las Ninas?”/PLASTILINA MOSH “AQUAMOSH”/Amy Winehouse “BACK TO BLACK”/GUNS N’ ROSES “USE YOUR ILLUSIONU”

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