ジュズツナギ

第 50 回

「 MC土龍の『土の眼〜ジュズツナギ編〜』 」

MC土龍
(ライブハウスnano店長)

いやー、お待たせしました。このコラムの以来を受けたのが9月の半ば。そして今がなんと年末も年末で12月の30日と来たもんだ。今年の汚れ、じゃない今年の仕事は今年のうちにということで、今筆を走らせてるわけなんですが…。 ホント遅くなってごめんなさいー。

えー、この「数珠繋ぎ」に文章を書いてよ、とバトンを渡してくれたのが股豪で現スタジオRAG河原町店の店長平田君。彼とは同い年で「僕らの世代で京都の音楽のキーマンと言えばモグラくんでしょう!」 なんて言われて調子に乗って「うん!俺やるよ!」なんて安請け合いしちまってさ。そんでこの様です。

えー。申し遅れました。「livehouse nano」という小さいライブハウスの店長「土龍(モグラ)」です。 このコラムでは皆さんが音楽に携わってるって立場から、その身を置く京都という場所について様々思いのたけをぶちまける感じですね。 まあ、僕は生まれも育ちも京都なわけで、その分逆に思い入れがそんなにない。 というか「隣の芝生は青い」的な他の京都以上の都市に憧れを持ってしまうというか。 憧れ…?違うなー。そう、興味がある。うん。そう。

でもここではそんな話あんましても筋違いな気がするので、敢えて京都の話をしようっと。 それに京都でライブハウスを構えてしまった以上、この先ずっと京都の音楽とは向かい合っていかなくちゃならないわけですし。

京都。

うーん、小さいなー。関西でいえばやっぱ大阪の方が都市としても大きいし、ハコも多い。 人口も多いからバンドの数そのものも多い。更に言うと東京なんてもっとでかくってなんせ日本において情報が発信される中心だし、うーん、末端と中央の距離が近いというか。 その分チャンスもたくさん転がってるしね。

でも。他の大都市と比べて京都に言えることは、あれですね、音楽を楽しむ土壌ができているな、と。娯楽ではない(日本では音楽は全く娯楽である!)文化としての音楽って大衆のものじゃないですか。その大衆とはコアな音楽好きを指すのではなく、一般的な音楽好き(普通にCD買うよ、普通に通勤通学しながら聴くよ、みたいなね)。 そういう人間が音楽をより楽しむ土壌ができてるなーって。飽くまで土壌だけですけどね。

ライブハウスも大阪や東京に比べれば、もう造り自体が相当フランクだったり。ライブ終わってからのハコは普通の飲み屋になってたりね。 西部講堂なんて自由すぎるし。あそこの前の広場でなんてフリーイベントが頻繁に行われてるし、そんなイベントでは近所のおっちゃんがめっちゃ踊ってたり。 (余談になるかもしれないけど、京都に所謂売れ線の「ウタモノバンド」が少ないのは西部講堂があるかもしれないね。過去のレジスタンスの拠点が今もロックの殿堂として左京区にそびえてるわけですよ。京都で音楽やる人間にとっては最高の拠り所なのかも。PUNK IS BEAUTIFUL!!ですよ。)

つまりは、京都という土地においては(少なくとも他の大都市に比べて)音楽が何も特別なものではない。もちろんライブハウスも特別な場所ではない。言い切るにはまだ早いか。そうなるべきだと。

ミュージシャンは特別な存在でいい。
最高の音を奏でて最高のショウをみせてくれればいい。
西部講堂の影響でヘンテコな音が出したいなら出せばいいさ。
かっこよければそれでいいんだ。

ただ。

ライブハウスは特別な場所であってはいけないんですよ(その日に出演するミュージシャン以外にとって)。 音楽を楽しみ酒が呑める場所(呑めない人もいるけども)以上でもそれ以下でもあってはならない(バンドを育てるとか面白いブッキングを組むとかはまた別の話ね。ここではあって当然の前提。)。 音楽はそれを奏でるものにとってだけ特別であればいいわけで、それ以外の人間にとっては決して特別視されるものではなく、もっとフランクな、日常の傍にあるべきものです、と(ここでヘビーリスナーの方の誤解を招くかもしれないから一言。あなたはミュージシャンじゃないけど音楽は特別なものと認識してますよね。でもそれは立派にあなたの日常なはずだ!)。

大手レコード店が倒産し、大手レコード会社が音楽業界から撤退するこの時代。 音楽を聴くためのメディアはレコードでもMDでもCDでもなく(=現物ではない)、最早データファイルが主流。 その結果これからリスナーはどう動くか。音楽は聴けるけど現物がない。でも現物は売ってない。じゃあ、何か。 「生」の音ですよ。求めるのは。少なくとも僕はそう考えます。

これからの10年でライブハウスに足を運ぶリスナーは格段に増えると思います。 実際にそうなった時に、ライブハウスが特別な場所であってはならないんです。 日常的に「呑みにいこうか」って遊びに来れる場所。これが理想でしょ。 こんなこと考えたことありませんか?欧米ではパブやクラブに音と酒を楽しみにたくさんの人が毎晩集まってていいなーって。 その時代が来ようとしてますよ。 「日本は違うから」ってあなた、鎖国止めて何年立ってると思ってるんですか。

垣根をね、下げましょう。
来るべきその時代に備えて。

つまり、元々音楽を楽しむための土壌ができている京都ではそれが実現しやすいってことですね。おー。上手くまとまりしたか?なんだか結局京都の話ではなくなってますよね。 やっぱりあまり思い入れがないみたい。はは。

そしてライトな方もヘビーな方も、リスナーの皆さん。 ライブハウスはあなた方にフラっと遊びに来ていただける環境を整えようと必死ですよ。

どうか。
どうか遊びに来てください。音楽を普通に楽しめる耳をお持ちのあなた方にとっては、絶対に素敵と思えるミュージシャン達が最高のショウを繰り広げています。

そんな土龍のライブハウスの今後の理想論。 何言うてるかよくわかんないですね。ま、いいや。書いてるうちに勢いが出てきたんで本音は本音です。 嘘じゃなければいいでしょ。 えーと。 頑張ります(笑)。 最後まで読んでくれてありがとうございました!!


ジュズツナギ
つぎの方は…
平田浩康
股豪/STUDIO RAG
MC土龍
ライブハウス nano
ゆーきゃん
シンガーソングライター

ジュズツナギ第51回は、ゆーきゃん。言わずと知れた京都在住シンガーソングライター。そしてどの土地においても孤高のストレンジャー。彼に京都という土地についてロマンチックに綴ってもらいましょう。


MC土龍
土の龍とかいて「もぐら」と読みます。2000年から2002年にかけて京都メトロで開催されていた名物イベント「SUNSHINE!」の司会者を経て、現在京都は二条城の近く「ライブハウスnano」を切り盛り中。 また、イベント企画団体「nishiki-ya」に所属し、毎年10月の三連休に京都大学敷地内にあるロックの殿堂「西部講堂」にて「ボロフェスタ」を仲間とともに主催、司会も務める。 自身もバンド活動中。9人の大編成バンド「mannta」にてアルトサックスをご機嫌にブロウ。

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