ジュズツナギ

第 56 回

「 なにも無い人生 」

小原増男
( OOH-LA-LA)

俺は今まで何をしてきたのだろう…
今回、泣き言を書きたくなった…

俺が生まれた所は周りが田んぼと山、そして物心ついた時には、 外から見ればなんの不自由も無いように見える家なのだが… 今思えばまさにその時が俺にとっての戦場であり、一番つらい時期だった。 後に本籍ごと抜いて家を出た。あの家にいるのならホームレスのほうが100倍ましなのだ。

事情はともあれ逃げる事と、さぼる事しか頭には無く、そのくせ気の弱さと小ささを 隠そうとするかのように人に嫌がられる事にもかかわらず、しょうもない事しかよーいわんよーな、ただのイチビリだ。 野山を走っているうちに足の骨を2回折った。そのため歩き方もおかしく、 スポーツと言われる全ての物が大キライ、それにもまして勉強と思えるような事をしようものなら息がつまりイライラしてお腹が痛くなったりして、いやでいやで… 近頃ではあまり見なくなったのだが昔は青バナたらしたドロドロのボロボロのカ パカパの 見た目もどうしようもないクソガキだった。 おまけに胃腸が弱く、しょっちゅうウンコをたれていた… もひとつおまけに蓄膿症だったのでいつもいつもボーっとしてて、人の言葉を何ひとつ記憶できず、まさに「アホの見本」であったのだ…

そんな俺も本能と思うものは人一倍強い、いつもいつも煩悩と闘っているのだ が、すぐ負ける。食欲で言えば、山や道端に生えている食えそーな物は全部口に入れた。 睡眠に関しては、寝たら起きない。起きても眠い。 性欲に至っては、チンコを触るのが癖になっていて、小学生の低学年でオナニーを覚えた。 頭の中は女の裸を妄想する事でいっぱいで、どこぞの倉庫の裏の溝に落ちている雨に濡れた エロ本を拾って帰っては、ひっついたページをドライヤーで乾かしては必死でめ くっては 毎日オナニーしていた。…「人呼んで、サル」なのだ… 俺の人生、今でも全ての動機が「女とSEX」につながっている。

チョーなまけ者の俺が「ロックとバンド」を始めた理由も、サイテーの短小男が一度でも 「女にモテてみたい!」ただただそれだけだ… 人として男として何一つ自信の無い俺も、漠然と「ユメ」は見る。 何をどうすればどうつながるのかは何も分からず、人にもらったギターを弾いては唄ってみても不器用でオンチであがり症の俺が、上手く人前で何が出来るわけでもなく、それでも25才ぐらいまでは「ユメのために…」などと「ミュージシャンづら」をしたいがために、コ ンサートやライブハウスに行き、ロック喫茶に入りびたることが、心のよりどころだった。

そんな中で、ロックンロールが一番心に響いた。 「ロックンロールかっこいい、ロックンロール最高…」 しかし時代はニューウェイブ、パンク、テクノ…など、当時、新しい音が主役になっていた。 それでも「ミュージシャンづら」をしたいがために、レコードを聴き、ライブにせっせと行くのだが、新しいものに感動を覚えれば覚えるほどに、ギャップを感じはじめ、何が何だかわからなくなってきて、「ミュージシャンの道?」も完全に諦めてしまった…

今まで何度の「諦めと挫折」を繰り返して来たのだろうか?俺から「ロックと音楽」を取ってしまえば何一つなくなるのだが、死ぬ勇気など 全くない… 「いやまて、俺はHが好き」しかしそっちの仕事をすると、一番好きな事がキラ イになりかねない。「でも、やっぱりHがしたい…したい…」女にもてるどころか何一つとりえの無い俺がHの出来るのは「風俗」しかない!! 風俗に行くには「金」が要る。風俗に行くためだけに、今度は肉体労働に全力を注いだ… 未だに思う。声を大にして言いたい。「風俗こそ男の楽園」だ。 最近は管理がいいので、病気の心配も何のあとくされもしがらみもない、男の天国だ、パラダイスだ!! すべての男たち(女)に聞きたい。人がナチュラルで「SEX以上に身体的に気持ちいい事」が この世にあるのか? もし人が性欲を無くしてしまえば、人類が滅亡するのは明らかである。しみじみ思う… 家にも、金を貯める事にも縁のない俺が、何かをしようと思うと借金をするしかない。 だいたいの大人なら金を借りる事はできる。借金まみれになることは、つらいようだがだんだん慣れる…

今年49才、来年は50才になる。今までの仕事の話は、また長くなりそうなので、 万が一、俺に興味を持つ人がいるならば、店に遊びに来て気楽に話かけてほしい。 バカはバカなりにバカ話はできるし、人のプライベートには立ち入らない主義だが、自分の事や受け売りの話くらいはできる…

今は「music cafe OOH-LA-LA」(8年目)と「cafe TUMBLING DICE」(8月で1年)の 二軒のオーナーなのだが、つくづく思う…。今があるのは、ひとえにスタッフと周りの人達の 「おかげさま」なのだ。 ほんとうに俺一人で「なしとげた」事など何一つなく、まさに「何もない人生…」 いつ消えてもなんの不思議もない… ただただ店を支えてくれている周りの人たちに、感謝の気持ちでいっぱいである。
「ありがとう」


ジュズツナギ
つぎの方は…
ワダ・ザ・ヴァンパイア!
VAMPIRE!
小原増男
OOH-LA-LA
福西次郎
UrBANGUILD

ジュズツナギ第57回は、京都で一番にぎやかな木屋町通りのど真ん中、 最高の立地条件の中に有り、ライブスペースとしてちょうど良い広さで、 アーティスティックで、ハイクオリティーで、アグレッシブで、ハートフルで、クリエイティブで、 最先端な、今、最も注目すべきヤバイくらいカッコイイ店、UrBANGUILDのオーナーで、自ら建築家であり、エンジニアであり、芸術家でもある福西次郎氏。


小原増男
京都生まれ京都育ち。いわば「井の中の蛙…」なのだ。京都のバンドも同じだ。但し、この諺にはつづきがある。 「井の中の蛙、大海を知らず、されどその深さを知る」なのだ。外から見る人は、京都に今の流行や先端技術は求めない。伝統に培う「深さと味」なのだ。 そのプライドのために京都のミュージシャンたちは、新旧問わず、異常なほど貪欲に掘り下げる。 それはまさに「すべてを凌駕し、昇華するが如く」。 マニアックなジャンルの音についても、最先端な新しい音についても、京都のバンドマンたちは知っている。 石積みに基づいた上で「何がカッコ良くて、何が本物なのか」を。(わしゃ知らんけど…)

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