ジュズツナギ

第 57 回

「 小話「都落ち」 」

福西次郎
(UrBANGUILD)

え〜、OOH-LA-LAと云う京都は西院にあるライブハウスの店主、 小原さんから「数珠繋ぎになってるコラム書いてくれへん?」と余り意 味の解らぬ原稿依頼を頂き、細かい事はさておきギーアンを1年、ベー アンのヘッドを半年借りっ放しの引け目から何も知らずに「ハイハイい いですよ、何でもやります」と即答したものの、さてどういった趣向の ものかとサイトを開いて見てみれば、既に56人もの著名な方々が京都 と音楽に付いてそれぞれ語っておられる。こうなれば京都の音楽事情こ こ2、30年の大筋のネタは出切った感じで、もう十分な気がしながら も自分が数珠を断ち切る訳にも更々いかず僭越ながらお役目果たす事に あいなりましてっと。

そもそもこの小さな街、京都で長年に渡りヨタヨタしているならば同じ くウロウロしている人は何らかの形で顔見知りや噂でチラホラっていう ような人ばかり、ウロウロ暦が長ければ長いほど古い話を持ち出せばコ ハズカシイ事の一つや二つはこれ請負、仕方のないことで。

でぇ〜誰でもええんですが、ここで一つ例えを挙げるならば話の流れか らいってこのコラムをふって頂いた小原増男氏に成るのは致し方無く無 礼を顧みながら少し。書生が小マセた洟垂れロック小僧の中学は1年 生、氏がヤッておられたマイナーズ、あからさまに文字通りマイナーで したが、京都会館は別館ホールにて観たのが縁の始まり。氏は目の周り をパンキーに真っ黒にメイクなされヨレヨレにギターを弾いておられた が曲はほとんどそのまんまストーンズ、それでも書生たかだか13歳、 何とのう感銘しカッコよく感じた次第であります。さらに私もそれ相応 にヒネくれた美高生になり変である事だけが信条で蛙鳴蝉噪なパンクバ ンドをやっておりました頃は、氏の実家の離れの倉で柄にもなく練習何 ぞというイタイケな事をしていたりしてまして。この倉のスタジオの壁 一枚横が彼の部屋、我々がトンでもない風体で当時新興住宅地の桂辺り をヒンシュクかいつつ機材を担ぎ歩いて練習しに行きますれば、彼の御 仁は熟睡中、主人を跨いでスタジオへ入りヘタクソな爆音を文字道理、 傍若無人にタップリ出して汗をかきかき出てみれば、何事も無かった様 な元のままの状態で寝ておられる。余りの無防備さに脱帽しながらスタ ジオ代2時間200円枕元にそっと置いて帰ったもんで御座います。

この頃の己の演奏を寝ながらにせよ聞かれていたと思うと今更ながら赤面 この上無いんですが、そんな御互いハズカシイ遍歴熟知の上の今の付き 合い、曲がりなりにも箱の持ち主たる立場でも機材借りっ放しも出来る と云うもの。ゆうてみたら商売仇であろうはずの同業者同士で、持ちつ 持たれつやっておれるのも、エエんかワルいんか分かりませんが商売的 には生ぬるくユル〜い京都という土地ならではの事やないかと思いま す。まぁ私なんぞエエカゲンな人間はそれで随分助けられてます。その 代わりと言っては身も蓋もないんですが何時までたってもシャンとそろ ばん勘定ままならず上がったり、未だに顔を合わせば御互いピーピーゆ うてますが、桃栗三年柿八年、待てば海路の日和有りってなもんで「大 多数に売れている音楽=良い音楽」何てアホな公式はほっといて、気長 に安歩当車とやっとる次第です。

そんな悠長な人間が、今更ながら、蒔かぬ種は生えぬ、するは失敗しな いのは大失敗と又、新たに何度目かの一念発起して木屋町は三条下がる ニュー京都ビルにてUrBANGUILDなる怪しげな店を始めたのが一年 前、毎日毎晩、音楽に芝居、踊りに映像、キワ物大物魑魅魍魎取り揃え 侃々諤々って、、、、、もうええですか?なんか、落語もどきに調子に 乗って書いて来ましたが、ダメですね、肝心の気の利いたオチが出てき ません。

私と京都と音楽、オチがつかないから現在進行形で今だこの街でナンヤ カンヤとヤッテます。中途半端なオチがつくもんなら今頃もっと落ち着 いたオッチャンになって東京にでも落ちてます。


ジュズツナギ
つぎの方は…
小原増男
OOH-LA-LA
福西次郎
UrBANGUILD
粕谷茂一
Slim Chance Audio

ジュズツナギ第58回は、関西アンダーグランドシーンの様々な舞台を陰で支えるサウンドエンジニア集団スリムチャンスオーディオに所属するPA さん、粕谷茂一。京大在学中から京大吉田寮食堂ライブなどを企画運営する。現在もアバンギルドの箱付きを中心にライブハウスやクラブから西部講堂など各地の野外イベントで活躍中。最近はレコーディングエンジニアとしての仕事も多数こなしている。。


福西次郎
1967年、京都生まれ京都育ち。京都市立銅駝美術工芸高校卒。画業のかたわらで大工仕事をする。更にかたわらでCAFE INDEPENDANTSの店長兼ブッキングとしての10年を経て現在は木屋町三条で多角的アートスペースUrBANGUILDを営む。音楽レーベルCILもついでに営む。3人の画家による絵画的アニメーションユニットamfjek(足田メロウ+福西次郎+江村耕市)の新作も制作中。五児の父でも一応ある。

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