このインタビューは、タブロイドマガジン「GOZANS Magazine」でオトサタドットコムがプロデュースするページ「オトサタペーパー」に掲載されたものです。

Vol.3 騒音寺

「GOZANS Magazine」Vol.3掲載 2002.2.1


 昨年10月、1st ALBUM「双葉双一に気をつけて」をリリースした新世代フォークシンガー・双葉双一(ふたばそういち)。京都のボブ・ディラン、妖艶なオーラを放つ異形シンガー、そんな噂を耳にしていた私は緊張していた。と、彼はゆっくりと階段を降りて店の扉を開けた。肩の辺りまで伸びた黒髪、憂いを帯びた目、ぽつりぽつりと語られる言葉。時々はにかんだり、微笑んだり、質問に対して苦悩したり、偶然?店に置かれていた大きなゴリラのぬいぐるみを撫で撫でする彼。そんな様子に右往左往しながらインタビューを行った。 つづき>>

○音楽ってどんなものですか?

ふぅ−。(隣に置いてあったゴリラのぬいぐるみを撫でつつ思案中)…音楽と私。…最も身近にして最も難しいものですかね。…いや、ちょっと難しい事言ってしまいました?…音楽…(思案中→ゴリラを撫でる→頭を抱え込む→長い沈黙)…つまりですね、理想とする自分の、こうありたいと思う自分を…音楽を通して表現するものですかね。ですから等身大ではないです、きっと、僕の場合は。このままの僕を音楽を通して歌うんではなくて…こういう風にしたいっていうのありますよね…それですね。自分を高めてくれるような。(それからずーっと考え込む)

○最近はよく自然体でやってるという人が多いですよね

他人がどうやられるかは興味はないですね。…まあ…(悩み続ける)…自然体です。(疲れ果てた様子で)

○…あの、悩ませてしまって、具合悪くなりました?スムーズなインタビューでなくてすみません

(ゴリラを抱きしめつつ)いえ、実にスムーズじゃないですか…フフ。

双葉双一

○この前、友部正人さんと対バンされたそうですが

ええ、やりました!僕としては一大イベントでした。それで…なんか達成感がありましたね。続けてきてよかったなという、憧れの人ですからね。対バン…夢が叶ったというか…そういう感じですね。それで内容は良かったです。僕もいいショーができました。

○お話はされましたか?

それがね…あんまりできませんでしたね。好きすぎるとやっぱり…でも奥さん(マネージャ−)の携帯番号をいただきました。

○今後も京都で活動されていかれるんですか?

はい、多分。

○これからはどんなライブをされる予定ですか?

そうですね…踊って…歌いたいですよねぇ。

○じゃあ、曲も前とは違う感じに?

そうですね、これ(CDを見ながら)はもう昔のものですね。やっぱり、常に脱皮していかないと駄目だと思うんですよね。同じものの繰り返しではやっている意味がないですから。

○ファンの方と話はされますか?感想とか

聞きません、そんなこと。聞いても誉める事だけですから、きっと。僕の音楽はすばらしいんで。ですから聞かなくていいんです、必要ないんです。よくないって言われればムカつきますからね。そんな事に神経すり減らす必要はないんですよ…ただ自分の中で厳しい目を持ってなくちゃいけないですけどね、常に。だって、人の意見にあんまり左右されるのは情けないじゃないですか。そういうものは作りません。

○普段はどうやってお金を稼いでいるんですか?

ウエイターです…フフ。でも駄目なんです、僕のようなおっとりしたタイプは。ですし、もう辞めるんです。

○(笑)辞める前に行きたいですね

絶対見られたくないです。嫌です。…僕みたいなのは普通に生きていけないんですかね。最近ひしひしと感じてますね。



インタビューの終盤、「ほとんど『はい』とか『いいえ』とか『…』ばかりになってしまいましたね。大丈夫ですか?」と言われ、「大丈夫です。」と答えたが、やはり「…」が多くなってしまった。しかし、彼の言葉の独特な『間=…』は非常に魅力的だった。今後は独りでなく違った形で活動するという、新たな双葉双一を楽しみに待つ日々。

interview:内山奈穂子
illustration:早川真紀子
双葉双一
○音楽をされるようになったきっかけは?

歌がうまかったんですよね…すごい…小さい時から。小学校の合唱とかで、やっぱり断トツにうまかったんですね。先生は何も言いませんでしたが、僕が一番うまくって。…やっぱり音楽だなぁって思ったんですね。(下を向いてはにかみながら)…天命といいますか。童謡とか季節の歌とか、よく母の前で歌っておりました。

○今のようにギターで弾き語りの形になったのは?
姉がずっとピアノを習ってて、クラシックに限らずいろんな音楽を聞いていたのですが、…その姉の部屋からこぼれてくる音をよく聴いていましたね。全然好きじゃなかったですけどね。ギターは…高校生になってからですね。…ギターを弾きました。

○合唱部とかに入っていたのですか?

そういうのは無かったですね。一人で歌っておりました。

双葉双一


○初めてのライブは拾得だそうですが、そのライブはどうでしたか?

あー…不思議と…緊張しましたね。それまで人の歌を崩して歌ったりしてましたが、ライブが決まった時はオリジナルが二、三曲だったので、慌てて作りました。…十曲くらい。不思議と今でもその曲を歌ってますね。

○歌詞が独特だと思うのですが、歌詞はどんな所から出てくるんですか?

それはちょっと…秘密ですね。それを言うと…真似されちゃいますから…。

○「タワーホテル」という曲の『彼が部屋に入っていくと 彼女は彼の目を見て うまく言えないことを全部言えたらなあと思った 彼はいつも彼女のおしゃべりをきいているのではなく 彼女の後ろで鳴っているマンドリンのような音をきいているの』この部分はとても印象的だったのですが、これはどんな状況で…これも秘密ですか?

あー。(ため息を漏らしながら)…すごい…いいですね…。(歌詞カードを眺め満足そうに)いいですね…これはでも、読んでていいでしょ。

○はい

それでいいんですよ。説明できませんよね。これが僕の全部の説明ですよ。ここにすべてがありますし。書いた時のこととかは僕もちょっと言えませんね。(笑)隠してるとかじゃ無くて、出てきたものですからね。僕も分からないんですよ、実際。…神業っていうんですか…。

双葉双一



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騒音寺
双葉双一
21世紀の京都に突如現れた孤高のフォークシンガー。少女漫画から抜け出てきたようなルックスと妖艶な雰囲気で見るものを釘付けにする。かつてのボブ・ディランのようなフォークサウンドと美しくもシニカルな詞世界は、友部正人などのミュージシャンからも評価が高い。

双葉双一の情報は http://www.osk.3web.ne.jp/~mayu/futaba/

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