オトサタコラム
「京都音楽シーンの真相」


フカミマドカ
(colla disc)

京都はユルい。
街のド真ん中に流れる鴨川。
その川辺を中心にユルい磁場が出まくってますな。

例えば市街地ド真ん中である四条三条間の鴨川べりで、
平日昼間っからビールかっくらってダラダラしてても別にヘンじゃない。
鴨川をもうちょっと上るとポカポカした陽だまりで昼寝もオッケイ。
時間は緩やかに流れていきますよ、ユルユルと。

だいたいが昔から貴族の街ですからね、
庶民の時の流れなんて京都にとっては関係ないのかも。

でね、京都って街は観光地であると同時に
学生街の側面があるんだな。
西の最高学府、京大をはじめホントにいっぱいの大学がこの京都市内にありますよ。
大学生のイメージってみなさんどうですか?

まあ人それぞれだけど、オレは大学生=ロクデナシだと思うよ。
だってさあ、20歳ぐらいのヤツらが親のゼニふんだくって一人暮らしするんだぜ、
勉強するわけないよね、ね、実際。かくいうオレもそうだった。
最低限の出席しかしないであとは遊び呆けてましたよ。
人生において最大のモラトリアム期間、それが大学時代。

「音楽シーンの真相」ってテーマで延々音楽と関係ないような話をしてますが、
関係は大有り。

京都って街は今に始まったことじゃなくってン十年、いや百年以上前からそうだった。
「ユルい街」で「モラトリアム野郎がたくさんいる街」、
それが京都。

街のユルさはモラトリアム野郎達を、より一層のロクデナシに育て上げる。
大学で京都にやってきて、以来ずっと京都に住んでるっていう人も多数。
おまけにその多数のうちの大分が無職、もしくはフリーター、
もしくはフツーのサラリーマンとはほど遠い仕事に従事してたりするのよなあ。

これは偏見じゃないよ、その人達はすすんで自らそうなった。
9to5がバカらしい、自分の好きなことを大切にしたい。
そういう人生賭けたマジなモラトリアム野郎達。

そしてモラトリアム大学生達が中心になって京都の音楽シーンはあるのです
(ああ、ようやく本題に入れた)。

一般の人達からすれば「逃げた」といわれる人達による「逃げない」音楽、

それが京都の音楽シーンだとボクは思いますよ。
 モラトリアム野郎は実験、冒険の類をまったく恐れない。
だって人生がモラトリアムだからね。

時間はいっぱいあって、自分がカッコいいと思ったものを
人の目を気にすることなくやってみる。
独自のミクスチャーを試みる。何年かかっても。
昔の言葉で「歌舞伎者」、ですな。まさしくそれ。

だから人並み外れた異形の音楽も誕生する。
異形の音楽を許容する。
それはホントに素晴らしいことなのです。
流行がどうだとか関係なく、イイと思うものは取り入れ、
ダメなものは無視するそのセンス。

他人なんて関係ない。

もちろん長い歴史の中で実験に失敗した人も数多くいたでしょう、
これからも失敗していくでしょう、でもこの京都らしいあがきが失われない限りは
いつでも京都から新しいものが生まれてくるのですよ。

でも時としてそれが裏目に出ちゃう場合もある。
時間がユルユル流れるこの街でユルユルやってるうちに
アッという間に十年とか過ぎてしまって、
でもなーんにも変わっていなかったりするシーンもあったりもして。

どうやら「自分が変化してない」、
「音楽シーンは変化し続けてる」ってことが
麻痺してわかんなくなってるみたい。

で、そういうオヤジさんは「オレ達の時代は熱かった、今はアカン」とか言ってる。
自分の周りしか見えないんだね。
こうなったらもう何年経っても変わらない。
でもそれをも許容しちゃうんだ、京都は。

成功者はホントに書ききれないほど数多くいるよね。

聴いたことのないフレーズ、聴いたことの無いメロディを求めて
身を捩じらせてプレイしてた「くるり」、

手が小さくてギターが弾けないためにウクレレ持って
鴨川で歌ってた「つじあやの」、

サントラのレコードだけでDJの世界を構築したサウンド・インポッシヴルのメンバーで、
現在は「ファンタスティック・プラスティック・マシーン」こと田中知之、

ジャズで踊ることを世界とほぼ同時期にプレゼンした
「キョウト・ジャズ・マッシヴ」と「モンド・グロッソ」、

ジャズ、エレクトロニクス、そして現代音楽を深くボクらの脳に刻み込ませる「竹村延和」、
他にもいっぱいいっぱい。

ここ京都を中心に全国、全世界へ送り出してきた、
あるいは現在も送り出しているアーティストの演奏や作品を感じたりすれば
京都という街の音楽シーンの特異さ、
素晴らしさがみなさんも感じられるでしょう。
感じてくださいね。

京都はあらゆる物を許容する。
でも街は何にもしてくれない。
ハマってしまったら地獄、
上手くやれれば未踏のトップ・クリエイターとして名を残せる確率が高い。

そんなバクチのようなシーンが京都の音楽シーンなんじゃないかなあ。

ざっと書きましたけど、
どうですか?みなさん。



フカミマドカ
アマチュア時代の「くるり」、「つじあやの」、「クリンゴン」など多くのバンド、ミュージシャンと関わり、2000年9月にcolla discを立ち上げ「キセル」「永江孝志」のアルバムをリリース。DJとしてCLUB METROの人気イベント「CLUB ’80S」などで活躍。ラジオはKBS京都ラジオ「FAR EAST JUNGLE」(日曜24:15〜)に出演中。

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